FACCIAMO LA MUSICA

ヴァイオリン奏者がヴァイオリンについて語るサイトです

オーケストラの話(子供オケからプロオケまで~体験記~)

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私は現在の仕事の大半をオーケストラでの活動に充てています。

オーケストラは様々な人がいて様々な音色の楽器があり、一人で弾くまたは少人数で弾く事とはまた違う世界があります。

 

オーケストラは音楽教室の子供のための弦楽オケのクラスから始まり様々なオーケストラに参加してきました。

 

最初からオーケストラがすごく好きだったかと言うと、多分そうでもなかったと思いますが今仕事をしていてやっぱりオケをやっていて良かったと思っています。

今回は主に私がプロオケに関わるまでの事を順を追って書いていきたいと思います。

 

 

 

目次

 

 

幼少期の合奏体験

主に中学生までの小規模な合奏も含めてアンサンブルの体験を書いていきます。

 

私の場合、元々母がアマチュアオケのプレイヤーで、小さい頃は母に連れられて市民オケの演奏会に行って記憶があります。

母のアマオケ仲間は賢くもユーモアある人が多くて、私もいつかオーケストラで弾けたらこうやって仲間と好きな音楽の話を楽しくできるのだろうとオーケストラに憧れを抱いていました。

 

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1.音楽教室の合奏クラス

人生で初の合奏はヴァイオリンを始めて一年目の発表会で、ヴァイオリンを弾く母とピアノを習っていた姉と演奏した事だと思いますが、もう少し規模の大きいものであれば音楽教室の子供の生徒で集めた合奏クラスが私にとって初めてのアンサンブルでした。

 

おそらく4歳か5歳だったと思いますがあまりに昔の事なので記憶にほぼありません。

ただ、合奏があったことで同じ年代の教室の子と仲良くなって楽しかった記憶はあります。

 

この体験から以前勤務していた音楽教室では元々合奏をすることがなかった所を合奏のレッスンを入れる様にし、少しでも若い子たちにアンサンブルを楽しんでもらいたいと思う基盤が私に生まれたのではないかと思います。

 

 

2.音大付属の音楽教室の室内オケ

小学生高学年になるあたりから大阪音大京都市芸の音楽教室に短い間でしたが在籍していました。

そこではオーケストラ以外にもソルフェージュ、作曲等音楽の知識や耳を育てる授業が行われていました。

 

音大付属の音楽教室は家の近所の音楽教室とは雰囲気が違ってしっかり音楽を学ぶという意識の強い子が多かったです。

この時に知り合った教室の子と芸大に入って再会したり、現在プロとしてキャリアを積んでいる仲間がいます。

 

譜読みが遅く苦手だった私はオーケストラの曲の譜読みが間に合わずオケのレッスンはそんなに好きではありませんでした。

唯一楽しかったのは同じオケの友達と一緒に過ごせることでした。

 

3.青少年オーケストラ

元々小さい頃は大阪にいたのですが、10歳の時に長年住んでいた大阪を父の転勤の為名古屋に引っ越したことで私のヴァイオリンの環境は大きく変わりました。

 

おそらくこの引っ越しがなければ私はプロのヴァイオリン奏者になっていなかったでしょう。

音大付属の教室にいたものの、私の意識は決して高い訳ではありませんでした。

 

名古屋に来てから先生探しの為に家の近所の音楽教室に体験レッスンを行った所、そこの先生にもっと高いレベルで勉強したいなら名古屋で最も大きいとされる教室のうちの一つを紹介されました。

 

 結局家の近所の先生には習わずにそのより大きい音楽教室に通うことになり、そこで習っていた先生の勧めで名古屋NHKが持っている小学3年生から高校3年生までが在籍できる青少年オーケストラのオーディションを受ける事となりました。

 

初めてのオーディション

それまでオーディションというものを受けたことがなかったのでどんなものかよくわからずに母に連れられて受けに行ったと思います。

 

毎年この青少年オケでは多くの楽器を習っている子が受けに来て倍率もそれなりにあることを後になって知りました。

実際受けに行った時、受験する子達の演奏が控室で聞こえるのですが皆上手で、これじゃ自分は合格できないだろうと思ったほどでした。

 

自由曲一曲と8小節ほどの短いパッセージの初見が課題で、初見課題は間違えないようにゆっくり弾いたことはよく覚えています。

 

初めての本格的なオケ

オーディション後、一週間後くらいには合格通知とNHKビルに入るための入館証を受け取りこれで私もオケのメンバーの一人となりました。

ここに来て初めて色々なオケの決まり事を知る事となります。

 

例えばヴァイオリンは一つの楽譜を二人で見るのですが、その場合客席から見て内側(ヴァイオリンパートだと大抵左側)に座っている人が楽譜のページをめくる事や、divisi(パート内で分かれる)の部分は外側の人が楽譜に書いている上の段、内側の人が下の段を弾く、リハーサルの最初に指揮者が来たら団員全員が起立するなどのオケならではの事柄です。

 

音楽教室で室内オケはあったものの、管打楽器が入り、40分もする交響曲を弾く事はまずなかったのでオケの規模の大きさにも驚きました。

 

団員のレベルも高く、団員もしくは元団員が毎年コンクールで賞を取ったりプロになっています。

この時一緒だった仲間のうち何人かは音高、音大も共にし現在もプロとして活躍しています。

レッスン : 初回無料体験レッスン

 

 

学生オーケストラ

中学生の頃からコンクールに参加するようになり、自然と音楽高校の道を目指すようになりました。

音高は私の人生の中で最も楽しい学生生活でしたが、オーケストラの授業は正直そこまで好きではありませんでした。

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1.高校のオーケストラ

高校のオーケストラは授業としての意味合いが強く、厳しい現実を突きつけられる事が多かったです

 

よく記憶にある先生の話は、例えば政府はお金が無くなったときまず最初にどこを削るかと言うと芸術関連で、世間一般では芸術はお金の余裕のある時にするものでないときは無駄でしかない事、プロのオーケストラに入るには50人、100人の応募者からたった1人しか入れない狭き門であること等です。

最終的にはその厳しさに感謝していますが、私はここであなたにはオーケストラは向いてないと言われた事はかなりショックでした。

 

実際後になって高校時代に習っていた先生にも私がオーケストラはそんなに好きじゃないのだと思っていたと言われたので、この当時は本当にオーケストラで弾くセンスがなかったのだと思います。

 

 

2.大学のオーケストラ

ようやくオーケストラが面白いと思えるようになったのはこのあたりからでした。

 

ずっと憧れてきた東京芸大はオーケストラのレベルも高く、音の質や厚みが今まで経験してきたオケといい意味で全く違っていました。

練習していかなければリハーサルに間に合わないし、演奏会の回数も毎月一回か二回と結構頻繁にありました。

 

音高のオケと違い、授業という感覚よりプロのオケのように演奏会の為にリハーサルを重ね、それが授業時間でありその出席態度が単位の評価でした。

芸大学生オケの多くの演奏会は芸大の奏楽堂で行われ、入場無料(ただし事前申し込みの場合もあり)なので芸大に興味のある方は芸大のホームページで演奏会の情報を確認してみてください。

 

3.イタリアの音楽院のオーケストラ

ここまでオーケストラの経験としてはそれなりに充実していたものでした。

 

大学卒業後イタリアのトリノに留学し、そこでのオケの話は簡単にだけ書いておきます。

音楽院のオケは演奏会は結構多いけれどやっている内容はこれでいいの?というレベルでした。

 

過去に世界的なヴァイオリニスト、シュロモ・ミンツが来たり良い機会はあったものの音楽院の学生も音楽院のオケにはあまり期待していないので上手い子は最低限出席してほとんど参加しません。

 

ただ、トリノ以外の街に行って演奏したり音楽院のホール以外の会場で演奏することも多いので楽しい思い出は結構あります。

レッスン : 初回無料体験レッスン

 

 

オーケストラアカデミー

最終的に私がようやくオーケストラでどう弾けばいいか、家でオケの曲を練習するのにどうすればいいかわかってきたのはオーケストラアカデミー(略してオケアカ)に入ってからでした。

 

芸大の学生オケを通して卒業後もオケに関わっていきたいと思うようになり、プロのオケに合格するまでいくつかのオケアカに在籍しました。

参加してきたオケアカの事を簡単に書いていきたいと思います。

 

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1.桐朋オーケストラアカデミー

大学卒業後、すぐにイタリアに留学した訳ではなく、一年半は富山にある桐朋オーケストラアカデミーに在籍していました。

 

大学3年目の頃くらいから自分がどう進むか真剣に考え始め、オーケストラをきちんと勉強したいと思い、桐朋のオーケストラアカデミーを受けることを考えました。

周りにこのオケアカの情報を知る人がそこまでいなかった事や、オケアカのパンフレット自体そこまで詳細に説明があるわけではないので情報がとにかく少なかったです。

 

しかし実際在籍して本当に良かったです。

まず、学費が無料でオケアカは富山にあるので地元が富山と言う人以外は基本寮に入ることになりますがそこの寮費が無料であること、ランクによって金額の差はあるものの、演奏会に出れば出演料が支払われます

そしてレッスンや特別講座等が開かれN響ベルリンフィル等一流のオケ奏者のレッスンが受けれたり一緒に演奏する機会があります。

 

毎年オケアカからプロのオケに合格する人がいます。レベルも高く練習室も完備されていてこれほど良い環境はないと思います。

年々ここのオケアカは受験者が増えているとも聞いています。

 

2.小澤征爾音楽塾

音楽をあまり知らない人でも小澤征爾さんは知っているという人も多いのではないでしょうか。

 

その小澤さんとローム株式会社の社長さんが立ち上げた若い世代にオーケストラやオペラを演奏する機会を与え育成するために作られた小澤征爾音楽塾にも参加しました。

日本だけでなく中国や韓国でもオーディションが行われ、韓国・中国人の参加者も多くいました。

 

オーディションではヴァイオリンの場合自由曲バッハで、私が受けた時は演奏の後にオケやオペラの経験、何故小澤塾に参加したいかなど簡単な質問がされました。

 

事前のオーディションの後、合否が決まり、数か月後にリハーサルが始まります。

一つのプロジェクトはリハーサル含め大体約一か月半だったと思います。

 

小澤さんは指揮台に立つと、全くお歳を感じないエネルギッシュな指揮と指導で、オケも小澤さんの元でどんどん音が変わっていく事に感動しました。

 

 

小澤塾に参加するとリハーサル、演奏会の日数に合わせて研修費が支給され、遠方だと交通費が支給されホテルも手配されます。

沢山のキャリアを持ち、今もなお音楽に情熱を持っている小澤さんの元で演奏できたこと、また様々な地域で勉強する同じ世代の仲間と過ごし刺激を受けた事は貴重なけいけんでした。

 

 

 

3.トリノ王立劇場アカデミー

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イタリアのトリノへ来てまず最初にしたことは情報集めでした。

 

毎週様々な演奏会へ足を運んだり雑誌やネットでどんなコンクール、マスタークラス、アカデミーがあるか等出来る限りの事をしました。

その色々調べている中で私が留学を開始した年度からちょうど始まるトリノ王立劇場がサルッツォという町の音楽アカデミーと提携して行われるobiettivo orchestra が始まることを知りました。

 

今後の音楽活動の糧になるだろうと思いオーディションを受けました。

オーディションでは任意の曲と指定されたオーケストラスタディが課題でした。

もっぱらイタリアではオケスタの課題としてよくメンデルスゾーン交響曲イタリアを指定され、この時も例に漏れずでした。

 

これまで受けたアカデミーとは違い受講料が500€ほどかかりましたが、毎月の個人レッスンにグループレッスン、演奏会や年度末のオーディション等それなりに充実していました。

 

オーディションの合格者はトリノ王立劇場のオケにエキストラとして演奏する機会が与えられます。

現在は私はobiettivo orchestraの卒業生でオーディション合格者として劇場の公演に演奏することで奨学金が与えられています。

www.filarmonicatrt.it

新 イタリア・オペラ史

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  • 作者:水谷 彰良
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 4.ミラノ・スカラ座アカデミー

 ミラノ・スカラ座には非常に規模の大きいアカデミーを持っています。

アカデミーはアカデミーだけでレッスン室やスタジオも所有しています。

 

オーケストラは二年毎にオーディションが行われ、二年間アカデミー生として在籍出来ます。

在籍している期間、毎月500€の奨学金に加え、演奏会に出れば出演料が支払われます。

 

有名な劇場でかつ条件も良いため世界中からやって来ます。

ヴァイオリンの場合オーディションの受験者は100人は超えていました。

実際メンバーにアメリカ、ルーマニア、フランス、イギリスなど様々な国籍の子がいました。

 

スカラ座アカデミーでは首席で合格だったため、小規模のアンサンブルの公演にも頻繁に参加していました。

 

このアカデミーはとにかく公演数が多いです。

バレエ、オペラ、シンフォニーの演奏会等、あらゆる種類の公演を経験することが出来ます。

あまりに多いので2,3公演を同時進行でリハーサル、公演を打つなんてこともありました。

また、海外公演も多く、私の時はドイツ、アメリカ、オマーン、中国、アルジェリアなど様々な国での公演も行われました。

 

特にスカラ座アカデミーに入ってから私のオケの経験値は一気に上がったと思います。

アカデミーの公演に加えてスカラ座コンマスや首席奏者のレッスンが受けられ、勉強の場としても最高の環境でした。

 

レベルに関して言えば桐朋のオケアカや小澤塾と比べるとさほど高くないかもしれません。

ただ経験を積んでレベルを上げるチャンスをスカラ座は沢山与えてくれるので私はその恩恵を受けられたのかなと思います。

 

もし海外のオケに興味があり、オケを勉強してみたいという方はスカラ座アカデミーはぴったりの場所ではないでしょうか。

英語のページもありますし、オフィスは英語でやり取りも出来るので(ただし入団してからはイタリア語を勉強しないとついていけません)海外勢も多くいます。

www.accademialascala.it

映画『ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿』

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  • 発売日: 2018/06/13
  • メディア: Prime Video
 

 

 

最後に

世界中には様々なオケがあり、アカデミーにも個々の特徴があります。

どのアカデミーでも学ぶことは沢山あり、それが今の自分の活動に繋がっているのだと思います。

 

私の合格したRAI交響楽団は私の勉強してきたトリノにあり、ここのコンマスの元でも勉強してきました。

とにかくオケで弾きたいなら自分から情報を探し、実際にオケで活躍している人から話を聞くのはとても貴重な事だと思います。

 

今回はそれぞれの体験を大まかに書きましたが、より詳細に知りたい方や相談したい方はご連絡ください。

レッスンで相談を受けることも可能です。

cafetalk.com