FACCIAMO LA MUSICA

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ヴァイオリンの音程の話~正しい左手の使い方とは?~

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ヴァイオリンの左手は音程を取ったりビブラートをかける役割を果たします。

 

ギターの様にフレットがないので、特に音程をとる事は難しいです。

 

今回は主に音程についてどのように考えていけば良いか、練習方法等をご紹介していきます。

 

 

 

良い音程の取り方とは

レッスンで音程が悪いから音程を直しましょうと言われる事があるのですが、ただ闇雲にこの音が高すぎる、低すぎる、だけで解決出来る問題ではありません。

 

この問題に関して、音程の高低を指導するだけの先生もいますが、基礎が十分に定着していない生徒さんに対してそれだけでは根本的な解決にはなりません。

 

 

まず、正しい左手のフォームと指板の押さえ方を身につけていなければ、早いパッセージや難しい部分が出て来たら音程を外しやすくなります。

 

また、同じ音程を取っていたとしても、正しい押さえ方をしていなければ楽器が鳴りません。

 

倍音の話

楽器の仕組みとして、一つの音を鳴らすと同時に実は他の音程の音も僅かに鳴っています。

この現象を倍音というのですが、ヴァイオリンやピアノ、その他の殆どの楽器に起こります。

 

倍音には、出した音の1オクターヴ上、1オクターヴと完全5度上、2オクターヴ上、2オクターヴと長3度上、2オクターヴと完全5度上…と無限に続きます。

 

この記事での倍音の説明は私の言葉で行っていますので、より詳しく知りたい方はリンクからご覧ください。

 

 

左手の押さえ方が弱い、正しくないとこの倍音が鳴ってくれません。

倍音の鳴りが少ない事で何が起こるのでしょうか。

 

音が頼りなく聞こえる、音の強弱や音色の変化のヴァリエーションが少なくなる等、様々な部分でマイナスに繋がります。

 

実際に耳にはこの倍音はほぼ聴き取る事は出来ないのですが、上手な人はこの倍音を鳴らし、大きなホールでも通る音で弾いています。

 

ヴァイオリンの場合、この倍音を正しい左手の押さえ方により増やす事が出来ます。

 

 

左手の正しいフォーム

左手の基本的な考えとしては、手の甲を指が動く度に極力無駄に動かさないという事です。

 

指を極端に伸ばさない時以外は基本的に左手の形は写真の様な形をキープします。

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指が独立していないとどうしても手のひらを動かすことで指の補助をしてしまいがちですが、練習を実際に難しいパッセージを効率よく弾きこなす為には必要な事です。

 

弦を押さえる時に、指は上からおろすイメージです。

指と指の間を開いたり閉じたりする為に、手の水かきから動く意識で弾きます。

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丸で囲った部分から広げる事を意識します

 

特に多く広げなければいけない時は指先だけを広げても届きません。

私自身手が小さいのでしっかり伸ばす必要があり、フィンガードオクターヴや10度の重音音階を始めた頃は特にこの事を意識しながら練習していました。

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耳を作る

先程の倍音の話をしましたが、では倍音が鳴る音とはどのような音でしょうか。

また、正しい音程を理解しなければいくら練習時に音程を修正しても悪い音程のままです。

 

よくある練習に、ピアノで音程を取りながら練習、チューナーが正しいと表示されるまで合わせながら練習するというものがあります。

私自身もたまにこの練習はしますが、練習の仕方によっては耳が育たないのでどの様な事を意識するかによります。

 

音程を取る練習をする際には、あくまでピアノやチューナーの音程は適度に調律された音であり、音程を取る補助でしかないと思う必要があります。

 

これがヴァイオリンの正しい音程ではないという事です。

 

 

ヴァイオリンの音程の詳しい話はまた別の記事で書きたいと思いますが、ヴァイオリン族の特徴の一つは自分で音程を作る事にあります。

つまり、演奏する調や和声によって同じ音でも微妙な違いですが、音程に違いを与え、それによって音楽の説得力や調和を生むことが出来ます。

 

それをピアノやチューナーで合わせることによってヴァイオリンの特徴を殺してしまうという事です。

 

チューナー等を使った音程の練習は、この音が大まかに合っていてあくまで自分の取るべき音程のヒントだと思いながら練習した方がいいと思います。

 

そして、ある程度慣れて来たら音程を補助するものなしで練習します。

その時に自分の耳と感覚が必要です。

 

弾く音にもよりますが、例えばラの音をG線のファーストポジションの1の指で弾いたとします。

ヴァイオリンは正しい音程が出る時に開放弦のA線E線が特に一緒に響いてくれます。

楽器自体もビリビリと振動している事を楽器を挟む顎で感じる事が出来ます。

 

この瞬間、正しい音程で倍音が鳴り、楽器が通る音で弾いている状態になります。

 

文章で説明するだけでは非常に難しい事ですし、耳や身体の感覚なので時間の掛かる事ではありますが、これを常に意識して音程を取ると正しい音程でかつ、通る音で弾けるようになります。

 

 

 

調や和声による音程

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一般的でよくある音程の話では、導音を高めに取る、長三和音の第三音は低めに取る等があります。

 

しかしこの音程の話はソロで弾くときと室内楽・オーケストラで弾くときの音程の取り方は微妙に違います。

 

室内楽やオーケストラは全員が主役であり脇役でもあります。

 

和声に合わせた音程の取り方と、主旋律を弾く場合は和声や伴奏的な部分を弾いているパートの音程に乗っかるという意識で音程を取る事が通常です。

この詳細についてはまた別の機会に書きたいと思います。

 

一方でソロの場合は、シャープを高めに、フラットを低めに取るに加え、音階の機能に合わせた音程の取り方をします

 

勿論例外もありますし、はっきりとシャープは高め、フラットは低めと言ってしまうと大間違いだと言われるでしょう。

 

ソロは目立つ必要があるので伴奏の楽器の調律よりも少し高めに取る事もあります。

特にオーケストラとソロの場合、ソリストはオケの調律を聞いてそれより若干高めに取っている人が結構います。

 

音程は音色

先程の項目と似た話ではありますが、音程は時に音色まで司ります。

 

曲の中の一音で、あえて書かれている音程より随分低くとる事でミステリアスな和声を表現した、というある巨匠の話を聞いたことがあります。

 

なかなかにハイレベルな音程の話ですが、音程を曲調によってどう取るかというのは音楽的な内容を考慮する上で非常に大切です。

 

この記事では左手の話に重点を置いていますが、右手の弓のスピードや圧力、弦に当てる弓の毛の量などの条件で音程は変わっていきます。

 

この要素を駆使して音程を微妙に変えて音に表情を出すことが出来ます。

 

 

最後に

以前、同年代の優秀なヴァイオリニストと話した時に彼が「音程はヴァイオリン弾きの一生の課題だからどんなにコンクールでいい成績を残しても、ソリストとして成功してもずっと付きまとってくる問題であり、丁寧に音程をさらう事を忘れたら音楽は不快になる一方だ」と話していました。

 

文章では書ききれない事や説明しきれない事が多くあります。

もし気になる、質問等ございましたらレッスンやお問い合わせも受け付けておりますのでご連絡ください。

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