演奏会を振り返る その2~スカラ座アカデミーの演奏旅行~
以前にも私が演奏した演奏会の話を書きましたが、今回は第二弾として主にスカラ座アカデミーの時にあった演奏会についていくつかご紹介します。
スカラ座アカデミーの演奏会
演奏会を振り返るシリーズの第一弾はイタリア留学1年目に行ったソロや室内楽の演奏会話を主にご紹介しました。
下のリンクをご参照ください。
私は2018年と2019年の二年間スカラ座アカデミーにオーケストラのメンバーとして在籍していました。
スカラ座アカデミーは他の記事でも紹介した通り、とにかく演奏会の数が多いです。
多い時はバレエ公演を行いながら交響曲の演奏会と他のバレエ公演のプログラムのリハーサルを行う等忙しい時はかなり大変です。
しかしその叩き上げのお陰で譜読みも早くなったし作品によって演奏の仕方の傾向を掴めるようにもなったのでこのアカデミーには非常に感謝しています。
ドイツ公演
一番最初の遠征の演奏会はパヴィアだったと思うのですが、それは子供向けオペラの公演で、演奏後すぐにミラノに戻る必要があったため特に街を見る時間もなかったので省略します。
1年目の夏休みに入る直前の時期にスカラ座アカデミーでは初めての泊りがけの演奏旅行がありました。
場所はドイツのヴォルフェックという小さな町で、イタリアやスイスからも比較的近い場所にあります。
演奏会は2回あったので4日程街に滞在していたと思います。
この時の演奏会はヴァイオリニストのレイ・チェン氏がソリストとして来ており、ヴィヴァルディとピアソラの四季を演奏しました。
素敵な会場で、写真にあるホール以外の外観はドイツ公演のタイトルのすぐ下に貼った1枚目の写真がそれです。
様々な部屋があり、貯蔵物も多く、演奏会の合間に見学もさせて貰いました。
マルティーナ・フランカ公演
2018年の夏は7月中約2,3週間程南イタリアにあるマルティーナ・フランカの音楽祭にスカラのアカデミーのオーケストラは呼ばれていて、そこに滞在しました。
マルティーナ・フランカは白い壁に円錐形の石積み屋根を乗せた建物で有名なアルベロベッロのすぐ近くの街なのでマルティーナ・フランカもアルベロベッロの様に壁が白い建物ばかりでした。
宿泊したアパートもその伝統的な建物で建物の中も外も真っ白でした。
このマルティーナ・フランカでの音楽祭ではヴァッカイのオペラ「ロミオとジュリエット」の公演を中心にその他交響曲の演奏会等も行われました。
ヴァッカイという作曲家はなかなか耳にしませんが、声楽をされている方にはヴァッカイの声楽教本が非常に有名なのでご存じかと思います。
因みに私はこのマルティーナ・フランカに行くまでは全く南イタリアに行った事がなかったのでどんな所か知りませんでした。
北イタリアとはまるで違う国にいるかの様に全く違う建物が並び、地元の人の話し方も北イタリアとは結構違います。
アメリカ公演
秋にはアメリカ合衆国への演奏旅行がありました。
メリーランドやニューヨーク等で公演があり、約10日間アメリカに滞在しました。
ニューヨーク滞在中は比較的自由時間も多く、街を少し見る事が出来ました。
メトロポリタン劇場の見学はアカデミーが予約してくれていたので皆で見に行き、この時はカルメンの公演のリハーサルを少し見て、その後にメトロポリタン劇場のオケの団員の方のお話を聞く事が出来ました。
また、ニューヨークフィルの公開リハーサルが自由行動できる時間に丁度あったので友達と一緒に見に行きました。
この時の公開リハはギル・シャハム氏のソロでプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番と後半はチャイコフスキーの交響曲6番でした。
ギル・シャハムさんのソロは曲が進むにつれてどんどん惹き込まれていく魅力があり、オーケストラも非常にレベルが高かったので行って良かったと思いました。
アカデミーのオケの公演はメンデルスゾーンのイタリア交響曲とチャイコフスキーの交響曲第5番で、交響曲を中心としたスカラのアカデミーの公演は演奏旅行としては珍しかったです。
公演のうち、一度コンサートミストレスの弦が突然伸びてしまい、私はその時の公演はコンミスの隣のトップサイドにいたので急いで楽器を私のものと交換させました。
楽器自体は弦を巻けば良かったので特に大きな問題ではなかったのですが、演奏している時にリーダーであるコンミスが演奏を中断して弦を巻くのはあってはならないのでこの場合、トップサイドが楽器を交換してコンミスに演奏を続けさせるのがオーケストラでは通常の行動です。
アルジェリア公演
大晦日はスカラ座での2018年最後の演奏をし、その後同じプログラム(一部省略)でアルジェリア公演がありました。
アカデミーの演奏旅行でアメリカ大陸、アフリカ大陸、そしてのちに中東にも行く事になるのですが、色々な地域に行く事が出来ました。
まさかアフリカに行くとは思いませんでしたがアルジェリアはミラノから飛行機で約3時間ほどなのでそう遠くはないので距離的にはアメリカとかよりもずっと近いです。
これまで経験した演奏旅行はどれも素晴らしく、色々と小さなトラブルがあったものの素敵な演奏旅行でしたが、アルジェリア滞在に関してはトラブルが起こりまくりで、今の所この演奏旅行を超える最悪の演奏旅行はありません。
ホテルは素敵な所で、イスラムっぽい雰囲気があり、ご飯も美味しかったのですが、お湯が出ないという事件が起き、冬で肌寒いので滞在中はシャワーを浴びる事が出来ませんでした。
お湯が出ないのは私だけでなく、他の部屋のメンバーもそうだったので恐らくホテル内にお湯が出ていなかったのではと思います。
空港からホテル、ホテルからコンサートホール等の移動はバスをチャーターしていたのですがそのバスの運転も結構粗くて、ホテルから出る時にホテルの柵を壊していたり、乗っていていて不安でした。
演奏会はアルジェリアの大統領が来るけれど1時間半遅刻するので演奏会もそれに合わせて開始が遅れました。
演奏中は聴衆のお喋り、携帯電話の使用、通話、喫煙と、アメリカ、ヨーロッパ、日本では見た事のないお客さんの光景にびっくりしました。
国によって色々な文化や習慣があるのは理解する必要がありますが、少なくとも公演はヨーロッパの音楽をしているので少しはヨーロッパのスタイルの演奏会を聴く態度を知っている人達がお客さんだと思っていましたがどうやらそうでもなかったようです。
また、空港では何度もパスポートチェックがあり、それも必要ないパスポートチェックを行おうとしていた係員もいて、5回くらいパスポートチェックをされてその待ち時間にうんざりしました。
アルジェリアの街はまた独特で、イスラムとほんの少しヨーロッパの雰囲気もあり、シチリアの様な感じの街並みで素敵でしたが、トラブル続きだった事や、この演奏旅行で振った指揮者が全く自分の好みじゃなかった事もあって残念ながらあまりいい思い出はありません。
最後に
この後2019年はRAIのオーディションに合格してRAIでの仕事をしていたのでスカラ座アカデミーの公演はあまり乗っていませんが、特に2018年は出来る限り乗っていたので短い期間ではあるものの沢山思い出があります。
アカデミーは同じ世代のこれからプロを目指す仲間が沢山いて、そこで出会った仲間たちと励まし合えた事で私も沢山刺激を受けて頑張ることが出来たかなと思います。