音楽家は一生かけて勉強する
私は音大、音楽院を出てプロのオーケストラで仕事をしたり講師としてレッスンをして、所謂プロのヴァイオリン弾きをしていますが、学生の頃と変わらず勉強は続いていると思っています。
今回は現在の私の音楽を学ぶ環境の話をしていきます。
勉強は一生終わらない
音楽の世界に限らず、どんな職業でも上を目指す人程常に新しい情報を取り入れたり違った観点で見ている人の意見を聞いてみたりと外からの助言や情報を大切にしています。
世界中には数えきれないほどの音楽があり、一生かけてあらゆる作品に出会い、出会う度に新しい事を学んでいくのが音楽家の運命だと思います。
学生の時からヴァイオリンの講師をしたりオケで弾いたりしていたので特に学生時代と現在で大きな違いがあるわけではありませんが、緩やかに私の環境は変化しています。
レッスンに通い続ける
私は教える側の時間の方が現在は圧倒的に多いですが、未だに尚学生時代からお世話になっている先生の元にレッスンに通っています。
先生の私に対する扱いは最初に出会ったころと比べると変わってきており、それはレッスンにも現れています。
音楽院で勉強していた時はレッスン回数も多く、試験もあったので先生自身も責任を感じてしっかり面倒を見てくれていましたが現在はどちらかというとカウンセラーを受けているような感じです。
レッスン自体は、どちらかというと音楽の知識に関する話や楽曲分析の議論が主なレッスンでの内容です。
また、私の状況や悩んでいる事、これからの演奏会の計画などの相談に乗ってくれたりしてくれるので年齢とレベルに合ったレッスンと師弟関係かなと思います。
成長が止まる不安
音楽院を卒業したと言ってもまだ1年前の話なので、学生時代にヴァイオリン講師をしたりプロのオケで弾いていたとはいえ、まだまだプロを名乗っていても新人です。
ほんの少し前まではプロのオーケストラに入りたい、プロとして仕事をしたいという目標があり、それに対する不安が大きかったです。
しかし、プロを名乗ってからは学校で勉強しなくなり、レッスンにも通わなくなれば私自身の成長が止まってしまうのではないかという不安が今、少なからずあります。
ヴァイオリンは十代のうちに演奏技術は完成されるのでそれ以降は上達の見込みは低いという事を、昔聞いた事がありました。
私自身は十代までが成長のタイムリミットだとは全く思っていません。
むしろ藝大を卒業してからこの5年くらいの間に出来るようになったことがずいぶん増えたので、自分基準ではありますが毎年少なからず成長を感じています。
成長は努力を続けていれば年齢関係なく成長するものなのかなと思っています。
仕事をしながらでも勉強は出来ますし、演奏の仕事なら尚の事毎回しっかりと演奏する曲を勉強、練習していればこれは成長に繋がるでしょう。
私の先生であり、スカラ座のコンマスのマナーラ先生は私がRAIに合格した時に、「オーディションで合格したから仕事に困らないと思って向上心がなくなったり、練習しなくなるオケの団員が時々いるけどそういう人にならないでね」と言っていました。
時々そういう団員がいる事は残念ながら事実で、私自身も肝に銘じていなければいけない事です。
レッスンを受けないデメリット
レッスンを受ける事が楽しいと思える時とそうでない時があります。
私の場合、楽しくないというより、レッスンを受ける度に恥をさらして凄く恥ずかしい思いをしているのでレッスンを受けない方が気が楽です。
ただ、誰にも間違いを指摘されず、それに自分も気が付かないままというのはレッスンで恥ずかしい思いをするより恐ろしい事です。
レッスンが嫌だ、行きたくないと思った事は何度もありますが、出来ていない事が明確になったり練習していると気が付かなかった事に気が付けたりするのでレッスンの後は受けて良かったと思います。
先生に聞かせるから練習しなければいけないと思ったり、レッスンの復習をしないと、と思う繰り返しがあるからこそ練習が続くのであって、一人で勉強する事はそういった事がないのでより難しいでしょう。
私は先生にもう来なくていいと言われない限りはレッスンを受けていくつもりです。
ある有名なヴァイオリニストは巨匠を呼ばれる程の経験年数とキャリアがあっても尚レッスンに通っていたという話がある程なので、レッスンを受けるのに年齢はないと思います。
最後に
大学に入れば悩みはなくなる、プロになってある程度仕事が出来る様になれば困らないとその時々で自分の立ち位置と違う人には不安も悩みもないと思っていた時がありましたが、音楽家である以上一生勉強していく必要があるので演奏や知識に関する疑問やわからない事は尽きません。
RAIのオケの仲間で、私より年上で随分キャリアがある方もレッスンを受けたりするという話を聞いています。
レッスンを受けなかったとしても自分で積極的に演奏活動をしたり自分で課題を探して勉強を続けていたりと、プロこそ常に勉強していると思います。
優れた演奏家というのは他の人よりも多く勉強できる人である、という言葉を聞いたことがあります。
その言葉通り、優れた音楽家こそ努力を惜しまないと思うので私も常に勉強を続けていきたいと思います。