プロの音楽家を名乗るには
つい先日、SNS上である人が「長く続けている趣味とかあれば副業にしてたのに。例えば音楽とか」という事を発言していました。
私自身小さい頃からプロを目指していた訳ではないのですし、そもそも最初は大人になっても続けられる趣味になるだろうと思い親も始めさせた事でした。
それでも単なる趣味の延長でこの仕事をしているつもりではありません。
教える、演奏するどちらにせよ芸術家として仕事する事と趣味にする事は違うし、仕事にする以上高いクオリティと責任を持つ必要があると思います。
プロである証明書
プロのヴァイオリニストであると証明できる資格があるかと言われれば特にないので誰でも名乗る事は簡単です。
なので音大や音楽の専門機関、コンクール歴や活動歴がまったくない人でも自分でそう名乗っていればなれる世界です。
結局の所、自称プロの音楽家の様な人が集まっているのが芸術の世界だと思います。
誰でも名乗れるとは言ったものの、音大にも出ずコンクール歴も活動歴もない自称プロの音楽家に誰が仕事を依頼するでしょうか。
肩書が凄ければいいという話ではありませんが、私なら何の経歴もない人に仕事を頼みたいとは思いません。
芸術でもある程度学歴社会です。
桐朋や藝大に出ている人はそれだけで信頼されやすいです。
とはいえイタリアで藝大出身ですと言った所で日本の学校を出たんだなという程度にしか扱われないので藝大の卒業証はイタリアでは全く役に立ちません。
イタリアの国立音楽院もただの卒業だとよっぽど問題がない限り皆入学、卒業出来るので大して音楽家としてのキャリアの証明にはなりません。
国立音楽院の満点や首席の成績で卒業した事でようやくそれなりのレベルかなという程度なので日本とは事情が違いますが、日本でも海外でもプロの演奏家として評価してもらう確実な証明は、それなりに名の通ったプロのオーケストラに所属する事や音大や音楽院の先生になる事でしょう。
経歴があったとしても
名の通った音大の卒業生やコンクール歴があったとしても、必ずしも仕事が出来るとは限りません。
例えばエリザベートやチャイコフスキー等の音楽の世界で世界中の誰もが知っているような国際コンクールに優勝した人ならその実力だけでいくらでも演奏の仕事は舞い込んでくるでしょう。
逆に自分をプロデュースする事が上手い人やツテがあり行動力のある人はそこまで演奏能力が高い訳でなくても仕事をどんどんしていたりもします。
私自身の経験でも、学校を首席で卒業しようが、コンクールで優勝しようが、その直後は周りは祝ってくれたり良い言葉をくれますが、少し経てば大抵誰もそんな事覚えておらず、私に対する音楽家としての評価はほぼ変わりません。
唯一最も私に対する周りの評価を変えた出来事はRAIのオケのオーディション合格した事だと思います。
周りの評価は大して変わらないとはいえ、コンクールで結果を残したり演奏会で良い演奏をするという、出来事としては小さなことだったとしても、ポジティブな事を繰り返す事で周りからの演奏家としての評価や信頼は高くなっていきます。
評価が高くなる事で周りから仕事を依頼されるようになるので頑張りの積み重ねは非常に大切です。
一緒に仕事をしたいと思われる音楽家になる
例えばピアノのソロリサイタルだけで仕事していくなら一人でもやっていけると思いますが、それでも演奏会を行う為にスタッフさん等と関わる事があるので何の仕事にせよ一人で仕事を完結する事は不可能です。
では一人で音楽教室をやればいいかもしれないという意見もあるかもしれませんが、それこそ生徒さんと関わるので一緒に仕事をする相手はいなくとも必ずコミュニケーションが生まれるので一人で出来る事ではありません。
音楽家は癖の強い人が多いですが、それでも性格の悪い人はやはり嫌われるし仕事も来なくなります。
性格に少し難があったり癖が強くとも、一緒に仕事をして問題がないのならそれで全然構いません。
あくまで仕事なので一緒に仕事する人と友達にになる必要は必ずしもある訳ではないので。
しかし、あまりに雰囲気を悪くしたりする人はどんなに良い演奏をしていても評価が低くなってしまいます。
演奏能力は平凡だけれど性格が良く、約束を守れる人と演奏能力が高くて性格が悪く約束の守れない人なら前者を取る事もあり得ます。
このあたりの話はどの世界にいようが言える事なので今更言う話でもありませんが、実際に大きなコンクールで優勝したような優秀な人なのに空気の読めなさや言い方のきつさに仲間に嫌われて団体から出ていかざるを得なくなった話もあります。
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先生になる資格
では、ヴァイオリンの先生の資格はあるのでしょうか。
大手音楽教室には試験があり、そこの音楽教室で先生をやれるという証明は出来ますが、学校の教員免許の様に国が定めている講師免許というのは存在しません。
音楽教室で採用されたり、自分で教室を開いたりすれば学歴も経験も関係なくヴァイオリンの先生を名乗る事が出来ます。
ただ、生徒さんは先生の経歴を見て選ぶ方も結構いるので、演奏家としても実力のある人の所には熱心な生徒さんが集まってくる傾向にあります。
生徒を思うと
教室や先生によって色々な方針はありますし、生徒さんがどんなレッスンを望んでいるのかによって選ぶ先生も異なっていきますが、ただ一つ言える事は先生として教える熱意のない人は先生にならないで欲しいという事です。
生徒さんがレッスンの申し込みをしたにもかかわらず返事がない、教える気がない等、他のジャンルのお稽古の先生の評価ですが、時々そういう事を聞きます。
ヴァイオリンに関わらず先生をやる以上レッスンが出来ないにしても返事をする事が当然で、もし教えれるなら最善を尽くすのが私達の仕事です。
趣味だから、子供のお稽古だからそんな本格的なレベルを求めていなかったとしても、正しい事を教えられない先生に習った事で練習しているにも関わらず全然上達しない、面白くないと思う生徒さんも結構います。
誰でもヴァイオリンの先生は名乗る事は出来ますが、生徒さんの為にもレッスンをしっかりやるつもりがない人には先生をやって貰いたくありません。
寧ろ、レッスンの為に自分も勉強して、生徒さんの成長を感じた時、また、生徒さんと自分が一緒に成長したと思えた時こそヴァイオリンの先生をやっていて良かったと感じる時です。
これを体験できずにヴァイオリンの先生をやっている人は残念だなと思います。
最後に
結局のところ芸術関係には国家資格というのがないジャンルの方が多く、プロの定義も非常に曖昧です。
国際コンクールで優勝し、演奏活動も多く、レベルは一流と呼ばれる水準だけれど音大や音楽の教育機関で勉強しているので学生であってプロではないと言えばそうかもしれません。
そういった人たちは数年もすれば立派なプロになるので大抵は学生時代からプロ扱いされていると思います。
言える事は、自分の演奏の実力を磨いておく事と、人とコミュニケーションを上手くしていけば仕事できるチャンスが来るという事です。