テクニックに合わせた基礎練習③~弓の練習~
基礎練習について紹介するシリーズです。
今回は主に右手の使い方に特化した本や練習についていくつか紹介していきます。
右手のコントロール
様々な音色を作る為には弓を扱う右手のコントロールが必要不可欠です。
以前にも弓の使い方にについて説明しているので参照して頂けたらと思います。
どうしても新しい曲を始める時は左手の音程の事に気を囚われがちですが、右手のコントロールは左手よりもずっと複雑だと思います。
右手で特に学ぶべき基礎練習は
このあたりをまず使い分ける様に練習していく必要があります。
では、どの様に練習していけば良いのでしょうか。
移弦の練習
移弦の練習については他の記事でもセヴシックのOp.2-5を紹介しています。
動画で紹介しているのは初めのヴァリエーションですが、ここでは移弦と音と音のつなぎ目を自然にする事に注意をしながら練習する目的があります。
セヴシックOp.2-5 ヴァリエーション1 Sevcik Op.2-5 variation1
他には、より複雑な移弦の練習としてカールフレッシュのBasic Studiesの最後の見開き2ページがかなり役に立ちます。
非常に細やかなコントロールが必要なのでこの練習をスムーズにできる様になると曲の中での複雑な移弦もかなり自由になると思います。
弓捌きについて
スラーやスタッカート、テヌート、サルタート等弓の使い方は種類が多くあります。
特にカイザーやクロイツェル等の練習曲をやっていると必ずその様な言葉が出てきます。
弓捌きの練習に関してはクロイツェルの2番でよく練習されます。
版によって書かれている練習のヴァリエーションについては様々ですが、ほぼ必ず弓捌きに関するヴァリエーションが書かれているのでそれをまず順番に練習していくと色々な弓に慣れる事が出来ます。
練習曲で使ったヴァリエーションというのはその練習曲だけで練習するだけでなく、曲でも似た様なパッセージが出てきた時に同じように曲の練習で使うことが出来ます。
寧ろ、練習曲というのは他の曲で出会った時に難しいパッセージが上手く弾けない問題を解決するためのヒントの提示でもあると思います。
なので曲で難しいと思う部分でも使わなければ練習曲を最大限利用していると言えないでしょう。
弓のスピードのコントロール
まず弓のスピードをコントロールするには、自分の弾ける最速の弓と最遅の弓の幅が広くする必要があります。
最も速い弓と最も遅い弓の振れ幅が狭ければそれだけ出せる音の種類も狭まってしまいます。
まずは弓の音から先を自分の出来る最速で弾く練習と、最も遅い弓のスピードで弾く練習をします。
特に速い弓の練習の場合は腕だけで弾いてもより速いスピードを出すには限界があります。
なので弾く時に胸や肩、背中の筋肉を使って弾く事を意識する必要があります。
このスピードの練習には先程書いたクロイツェルの2番の様なシンプルな練習曲でまず練習すると良いでしょう。
ポジション移動を伴わないものであればカイザーの1番やセブシックのOp.1-1の最後の番号29番の様な練習曲ですることもおすすめです。
ヴァイオリン オンラインレッスン | SAWAヴァイオリンオンライン教室
弓の圧力のコントロール
弓の圧力と書きましたが、要は腕の重さがどれくらい弓にかかるかの話です。
これを練習するための練習曲はもちろんありますが、理解力がより必要になるのでシンプルなようで意外と複雑なテクニックです。
例えばセブシックにも圧力に関する練習がOp.1-2で少しだけ書かれています。
しかし、これに気が付いて練習する人はなかなかいないと思います。
圧力のコントロールの為の練習をリピツァーの高度なテクニックの為の練習の本でも扱っているので私は時々この本を使っています。
この本に関しては入手がリピツァーの財団でしかできないので特におすすめをしている訳ではありませんが、その他上級者向けの高度なテクニック(むしろ曲でも絶対使わないような複雑なテクニック)を扱っているので難しいテクニックを勉強するには非常に効果的な本になっています。
最後に
曲で様々な表現がしたいときにこの弓の問題に気が付かないとどんなに心を込めて弾いたつもりでも伝わらないという壁にぶち当たります。
やりようによっては曲の中でも十分勉強する事ができるので、毎回曲を練習するたびにこの部分はどういう風に弓を使えばいいかと考えていく事が大切です。
結局表現法も辿っていけばテクニックと密接にかかわっています。
最終的には弓をどう使うとどんな音が出るかを把握でき、それを曲で臨機応変に使える様になれると表現がより自由になっていきます。