20世紀のヴァイオリニストと幼少期の記憶
まだ小学生になる前後の話だと思うのですが、小さいながらにテレビ越しで凄い人だなと思ったヴァイオリニストは今でも忘れられません。
記憶があやふやなので、もしかしたらどの演奏家をいつ見たかが間違っているかもしれませんが、私が小さい頃にまだ生きていた20世紀の巨匠と呼ばれる人の演奏を当時テレビで見た事は少なくとも間違いはないと思います。
20世紀の最後を生きた巨匠
私が産まれたのは90年代という20世紀の終わりだったのでほんの数年の話です。
その当時は母が見ていたクラシックの番組やCDを気まぐれに一緒に観たり聴いたりしていた程度で大して知識もありませんでした。
ただ、いくつか強烈に記憶に残っているヴァイオリニストがいたり、実家を片付けていた時に昔のビデオを見つけて、この人の演奏の放送があったのか!と思い出したりと、今思い返すと不思議な事にも思います。
恐らく当時の私は、テレビの放送やラジオ、CDでもまだ90年代、2000年の初めまで生きていた演奏家の演奏を当時いくつか見聞きしていたと思います。
メニューインのニュース
1999年に亡くなったメニューインの死のニュースは私の耳にも届いていて、それはニュース番組で取り上げられていたと思います。
この時は彼がどんな人か全く知りもしませんでしたが、とにかく凄いヴァイオリニストが亡くなったんだと思った事は覚えています。
中学生くらいになってようやく過去の演奏家の録音を自主的に聞いたり本を読んで知るようになって、あの時の人では…?と気が付いた訳です。
メニューインはヴァイオリンの奏法についての本を残しています。
彼の奏法についての本は彼の演奏家としてのこだわりや健康法といった独自の観点で書かれています。
初歩から上級向けな内容までどの様に考えてどう練習するか等も説明があり、彼の培ったレベルの高い演奏を作り上げた基礎を覗き見る事が出来ます。
ただ、翻訳が難しく書かれているのか、元々メニューインが難しく書いているのか、言葉が難解だったりする文章も多く、理解するのに時間が掛かります。
アイザック・スターンの演奏
アイザック・スターンは、宮崎にアイザックスターンホールという名のホールがある通り日本との関りも深かったヴァイオリニストです。
関係ない話ですが、大分にはiichikoホールというホールがあるのですが、良く母が「宮崎はアイザックスターンホールというかっこ良さそうな名前なのに、大分には焼酎のいいちこってシュール…」と言っていました。
アイザック・スターンをテレビ越しで見たのは私がまだ小学生になる前だったと思います。
彼の演奏をテレビ放映でみて、時々目を見開いてオーケストラを見る姿に目力の強いおじいちゃんだなと思っていました。
ミュージカル映画「屋根の上のヴァイオリン弾き」のヴァイオリンソロを彼がやっていいて、このソロがとてもかっこいいです。
John Williams 映画「屋根の上のバイオリン弾き」 Fiddler on the Roof , Main Tittle
初めてこの映画を見た時は、え、こんな終わり方なの?という感じに思いましたが、劇中に出てくるスターン氏のソロは圧巻です。
最後に
母はアマチュアのオーケストラで弾いていた時期があったので、クラシック関連の番組を録画したりクラシック音楽のCDが家にあったのですが決して詳しい訳でもなく、どちらかというとオーケストラの曲を聴いていたこともありヴァイオリンの曲や演奏家はほとんど知りませんでした。
私がある程度大きくなって、積極的にヴァイオリンに関する本を読んだりCDを聴き始めて、初めて現在のヴァイオリンの技術と奏法はこれまでのヴァイオリニストが培ってきた歴史の中にあると知りました。
何も知らない小さい頃に観た20世紀の巨匠と呼ばれるヴァイオリニストはいまだに私の記憶に残っているのですから、やはり彼らの存在はまさに偉大なのだなと思います。
先日91歳でお亡くなりになったイギリスのヴァイオリニストのイダ・ヘンデルさんも日本に来た際に当時高校生だった私は彼女の演奏会に足を運んでいます。
彼女もメニューインやスターンのいた20世紀に活躍した演奏家で、彼女の演奏を生で聴いた時は、今の演奏家にはない独特の温かみを持った音という印象でした。
きっと、この音を知っている人が今の若い演奏家を20世紀の音楽家の様な演奏スタイルではなくなったと言っているのかもしれません。
ただ、今の演奏家が劣っているとは思っていません。
芸術は時代と共に変化し、価値観も変わるので今の演奏家が20世紀の演奏家と同じように弾かないのは当然の事ですし、誰かの真似をしたところで二番煎じでしかないのでしょう。
過去の巨匠たちの残した録音や作品等の大きな財産から今の音楽家は学んで、これからの芸術の世界を盛り上げていく事が大切なのかなと思います。