助手の話~基礎とテクニックのレッスン~
私は音楽院やアカデミーで自分の先生の助手をしていました。
つまり同じ門下の子をレッスンしていた訳です。現在もその延長で私の元に時々レッスンに来てくれたりします。
そんな中でレッスンをしていて良くある質問やどの様なレッスンをしたかまとめてみました。
助手ってどんな事をするの?
以前の記事でも大体の説明はしたのでそちらの記事も貼っておきます。
こちらの記事の助手の項目を見て頂ければお分かりかと思いますが、助手の役割は先生が時間の都合上レッスン出来なかった範囲や生徒の技術的に苦手な部分等を見るのが主な役目です。
生徒は音楽院やアカデミーの子達なので意識も高く、私自身もレッスンをすることで一緒に学べる事が多いです。
特に試験やオーディション前だけれど先生が忙しくてレッスンしてもらえないという時や、私自身はプロのオーケストラで弾いているので、基本ソロの曲や室内楽を中心に見ている先生とかわって、オケスタのレッスンを頼まれることも結構あります。
レッスンの参考
最も私の元に来るときに彼らが私に質問することは、技術的な問題をどう解決するかという事です。
私自身の体験上、この内容に関してはマスタークラスや公開レッスンの聴講、参加で多く参考になったと思います。
特にレッスンの聴講は非常に参考になります。
無暗にあちこち勝手にレッスンを受けに行くと習っている先生に良く思われない、また色んな先生の意見に惑わされてどう練習したらわからなくなってしまうという面で、レッスンを自分が受けることはある程度慎重になるべきとは思います。
しかし、聴講はレッスンを受ける訳ではないのでそういった問題もなく、むしろ進んで聞いた方が良いと思います。
自分が受けていない分、第三者の目線で冷静に見ることが出来、自分が受けている時とまた違った捉え方が出来るかもしれません。
では、私がこれまで受講した、聴講したレッスンで最も印象に残ったレッスンをいくつかご紹介します。
ヴァイオリンを弾く体にする
私が中学生の時、北海道で行われた講習会に参加した時の話です。
まだ講習会ほとんど参加した経験がなかったのですが、この時ほど記憶に残る講習会はなかった程私には多くの事を学ばせて貰ったと思います。
この時レッスンを受けたのはロシア人の先生で、その方は数年前にお亡くなりになってしまったのですが、とても暖かく愛情深い先生でした。
その先生のレッスンではとにかくリラックスして弾く事を言われました。
楽器を弾く前に腕を上にあげて、一気に脱力するように腕を下におろすという非常に簡単な体操を教えられました。
その体操をした後に弾くと確かにリラックスして弾けるのです。
難しい曲に挑戦するほど頭は難しい事に意識が行き、体が緊張してしまいがちですが、むしろその逆でいかにリラックスするか意識したほうが弾きやすくなるのだと体感したのは最もこの時の講習会でした。
ビブラートの練習
スカラ座アカデミーでの他の子のレッスンを聞いた時の話です。
スカラ座オケのコンマスのフランチェスコ・マナーラ氏のレッスンで、ビブラートの練習の仕方を訊きました。
それ以前にも勿論ビブラートの話は他の先生から聞いていたし、練習法もそれらと大体同じです。
言葉で説明するのは難しいので、詳しくは私に問い合わせいただければと思いますが、ビブラートの速さ、幅、動かす腕の部位によってビブラートの聞こえ方は違ってきます。
まずはゆっくりの動作で腕の動きを確認し、その時腕の動く速さや幅を変えず一定に動かします。
このことで腕の動きをコントロールする事を覚えさせます。
そこから段々早くしていくという方法で、ビブラートのよくある練習の方法だと思います。
それに加え、指先の動きがガタガタとせず、滑らかに動くことを意識します。
マナーラ氏はこの練習法の話をした後に、彼自身の話もしてくれたことでさらに説得力を増したと思っています。
彼はパガニーニコンクール等重要な国際コンクールで入賞をしているのですが、その後にもう一度基礎に戻ってひたすら基礎をやっていた時があったそうです。
実際、私が彼の朝の練習時にお邪魔した時も音階を丁寧に弾いていたので、これだけキャリアのある人ですら基礎を練習していると思うと私は勿論しっかり時間を作って勉強せねばと思わされました。
脳内と身体を別行動化させる
現在、ピネロロのアカデミーで習っている先生に初めてレッスンを受けた時の話です。
その時のレッスンはアカデミーではなく、講習会だったのですが、この時の思い出は非常に気分が沈んだ事ばかり覚えています。
初めてのレッスンでエチュードを弾いたのですが、それがひたすらテクニックの難しい曲でした。
その難しいテクニックに難しい意識を持っていかれずに緊張せずに弾くために、身体を記憶化させて脳では他の事をさせるという事を言われました。
例えば弾きながら何かの詩の一説を口にするという練習です。
ただ何も考えていない演奏をするという意味では決してありませんし、この練習の後にフレーズごとに流れや表情を考えるよう言われました。
難しい事にとらわれないために、演奏に音楽性を求める為にも一度脳と身体を別行動させるというのは今後の練習に非常に役に立ったと思います。
レッスンの理想
私の先生はレッスンで音楽的な知識や音楽性の話をする事がレッスンでする主な事です。
先生自身、テクニックは個々で学んで来てほしいと思っていて、音楽的な内容を生徒と議論する事がレッスンの理想としています。
私にもそれは何度も言われてきたことで、そのために生徒である私たちは技術的な問題を出来る限り自分達で解決するよう努めなければいけません。
そのために私が手助けをするよう言われたのですが。
では、技術的な問題を解決したからといって音楽的な内容を議論できるレッスンになるかというと別の問題です。
私がレッスンをする時にも、曲に対してどの様な音を出したいか、どんな表情か等を質問したりしています。
こうすることで先生のレッスンに行ったときには考えがまとまってくれたらと思っています。
最後に
他の記事でも書いた通り助手でも普通のレッスンと何ら変わりはありません。
習っている先生の大元が同じなので、先生に指導された事を元に勉強します。
なのでレッスンはしやすいかもしれません。
ヴァイオリンの基礎やテクニックの話など、気になる事がありましたら下のリンク、もしくはお問い合わせ等からご連絡ください。