この秋から開校!トリノの新しい音楽学校IMUSE
次年度(イタリアは年度の変わり目が秋) からトリノで新しい音楽学校が開校され、私もヴァイオリン講師としてこの学校に関わる事となりました。
学校名はIMUSE(アイミューズ)といい、主に音楽院の本科(日本でいう音大入学レベル程度)までの生徒が勉強する目的として立ち上げられた学校です。
今回はこのIMUSEについてのお話です。
IMUSE立ち上げの話
新しい音楽学校IMUSEは私の師匠でもあるAdrian Pinzaru(アドリアン・ピンザル)が立ち上げの中心人物であり、学長でもあります。
私が最初にこのプロジェクトについて話を聞いたのは1年前くらいだったと思います。
「若い音楽を勉強する子供たちの為により良い学べる環境をつくりたい」という事を学長であるアドリアンの願いがあり、それを実現させる為に様々な試みがされる予定です。
この学校は単純にレッスンをする場だけに留まらず、ソルフェージュや音楽史のコース、定期的な試験があったりマスタークラスやワークショップ等音楽院のprocedeuticiやpre-accademico(予備科))の様な内容が組み込まれています。
大人になって後悔しないために
特にヴァイオリンやピアノという楽器は小さい頃から始めて、若いうちにしっかり技術や知識を学ばなければプロになる道は非常に厳しい世界です。
一方で、世間からは遊びたい時期の子どもにやらせるなんて…という批判をこれまでにも聞きます。
実際に私が小学生の時に、小学校の先生がヴァイオリンに熱心な私の母を批判し、私が母に操られる可哀想な子どもような事を言われたのも事実で、幼いながらに不快だと思いました。
それでも小さい頃から頑張っていなければ大人になって後悔する世界です。
私の師でもありIMUSEの学長であるアドリアンは主に音楽院の本科にいる10代半ばから20代のヴァイオリンを学ぶ学生を多く見ています。
私も助手をしたり彼の門下のレッスンを見学する事がありました。
その中で思う事が、まず小さい時に基礎をきちんと学ばずに大きくなってしまった子を非常に多く見るという事です。
それでもイタリアの音楽院は音楽院の先生のツテがあれば学校に入れてしまい、入った後も試験課題さえこなせば皆卒業出来てしまいます。
そうした環境に甘んじて行く先のない卒業生だけがあふれているのも事実です。
そんな行く先のない生徒を増やしてしまっているのは子どもを甘やかして育てる親や妥協を許す学校にも問題があります。
まず教える側の私たちのできる事は子どもたちに正しい技術と練習する習慣を覚えさせる事です。
その事実を踏まえたうえで何か出来る事を、と思ったときに新しい学校を作ろうと思うに至った訳です。
IMUSEのシステム
この学校にはいくつかの試みがあり、以下の通りです。
- 1人の先生に毎週見て貰う事を基本としながら、月の1回のレッスンはいつも習っている先生ではない先生に習う
- 年間3回の試験を行う
- マスタークラス・ワークショップの開催
ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのコースではこれらの事が行われています。
複数人の先生に習う
特に毎月1回は他の先生に習うという事は、他の学校ではほぼない事なので先生同士の関係が良くなければ出来ない事だと思います。
これが吉と出るか凶と出るかは人によるので、非常に難しい所ではあります。
それに小さい子だと先生の指導の仕方が異なった時にどちらの意見を選ぶべきかわからなくなって結局一人に習った方が良いという子もいるので、私個人はどちらともいえないが本音です。
しかし、何人かの先生に習って、同じ内容でも指導の仕方やアプローチの仕方が異なった事でわかるケースも多々あるので最終的には色々な先生から色々なアイデアを貰う事は大いに賛成です。
生徒が異なる先生の意見に戸惑った時にいつも見ている先生がどう対処してあげるかにもよるでしょう。
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定期的な試験
人前で弾く回数が多いとそれだけモチベーションが上がると思います。
試験という事は人に聴いて貰って評価されるという事なのでその分やる気に繋がってくれるのではないかと期待しています。
受験で成功する子の条件に、本番に強い子という事が良く言われますが、若い時から本番に慣れる事は音楽家になるならないにしても今後社会に出る時に役に立つ時がきっと来ると思います。
また、試験の結果によって奨学金の制度もあるそうです。
副科、音楽基礎科目
他にも副科、第二楽器のコースやソルフェージュ、音楽史、アナリーゼ等の音楽の基礎科目のコースもあり、試験が一年に一度行われます。
また、室内楽のコースも行っているので、まさに音楽院とほぼ同じような事をこの学校はやる事になります。
単純に楽器を学ぶだけでなく、人と演奏する事を楽しめる機会になってくれたらと思います。
最後に
もう一つ言えば、このコロナの状況の中で開始となる事が正直不安でもあります。
不運なタイミングかもしれませんが、少なくとも随分前からこのプロジェクトを進めていたので、これから入ってくれる子供たちにできる最大限の教育をしていければと思います。
この学校の試みでトリノ、またはトリノ近辺地域にいる音楽を学ぶ子供たちの良い学びの場となってくれることをを願っています。
この学校で教えながらも引き続き他の音楽教室、オンラインでのレッスンも続けていきます。
私自身もレッスンの度に学ぶ事が多くあるので若い音楽家と一緒に勉強できる機会が増えたと思うと非常に嬉しく思います。