オーケストラの話〜ミラノ・スカラ座アカデミー編〜
以前の記事で私の経験してきたオーケストラでほんの少しミラノ・スカラ座アカデミーについて触れましたが、今回は少し詳細に書いていきたいと思います。
私が在籍していた時期は2018年と2019年の約二年間です。
その時の出来事などをいくつかご紹介いたします。
目次
スカラ座アカデミーはどんな所?
以前書いた記事で簡単に説明をしましたが、今回はもう少し掘り下げていこうと思います。
イタリアのミラノにあるスカラ座はヴェルディやプッチーニ等イタリア屈指の作曲家の初演も多く行われたイタリア最高峰とされるオペラ劇場です。
その劇場が持っているものを生かして若い世代の育成を目的としたアカデミーが2001年に設立されました。
アカデミーでは大きく分けて4つの部門で構成されています。
私はその中のうちの音楽の部門のオーケストラアカデミー生でした。
では、音楽の部門ではどのようなコースがあるかというと
- Coro di voci bianche(少年少女合唱隊)
- Maestri collaboratori(オペラ・ヴォーカルコーチ)
- Pianisti accompagnatori alla danza(ダンサーの為のピアノ伴奏者)
- Professori d`orchestra(オーケストラ奏者)
- Cantanti lilici(オペラ歌手)
このようなコースがあり、それぞれ定期的にオーディションを行い合格者はアカデミー生としてレッスンを受けたり公演に参加する事となります。
特にオペラ歌手のコースはソリスト養成のコースであり、元々定員が少人数なのもありレベルが非常に高く、過去の卒業生を見ても有名劇場でソリストとしてデビューしている人もいます。
1.スカラ座について
ミラノといえばあの有名なドゥオーモ(大聖堂、上の写真)ですが、その北側にガレリアがあります。
この通りを真っ直ぐ行けばスカラ座の広場に繋がります。
そこがかの有名な劇場です。
劇場ではオペラ、バレエ、オーケストラの公演等が開催され、サロンでは室内楽の公演やワークショップ等が行われています。
日中はステージツアーもあり、運が良ければリハーサルを見ることも出来ます。
他にも博物館やスカラ座専門ショップがあり、博物館では過去の公演の衣装や写真、フライヤーなどを見ることが出来ます。
公演前の空いた時間に訪れる方も結構います。
スカラ座の裏側(アーティスト用入り口から入れる、一般客が入れない部分)は地下と0階から7階まであり、その中には楽屋やリハーサル室、オフィス等多くの部屋があります。
オーケストラは6階の大リハーサル室でオーケストラのみのリハーサルを行うことが多いです。
それ以外だとミラノ中央駅から北に行った所にもリハーサルを行える建物があり、そこでもオーケストラのリハーサルを行われることがありました。
2.アカデミーとスカラ座の関係
劇場の建物から南西に10分~15分ほど歩いたところにアカデミーの建物があります。
アカデミー生がレッスンを受ける時は大抵この建物でレッスンを受けます。
オーケストラのアカデミー生はスカラ座オケの首席奏者のレッスンを定期的に受けることが出来ます。
主にオーケストラ・スタディ(プロのオーケストラのオーディションでよく出るパートの課題等)のレッスンを行います。
オケの中でどう演奏すればいいか等キャリアのある人からアドバイスを貰える事はこれからプロオケに入りたい若い人達にとってはとても貴重な時間です。
アカデミーの建物はそれなりに大きいものの、オーケストラのリハーサルが出来るまでの大部屋がありません。
なのでアカデミーオーケストラのリハーサルは広い場所が必要なので基本的に劇場、またはミラノ中央駅から北にある別館を利用しますが、室内楽など小規模の場合はアカデミーで行われることが多かったです。
ちなみにアカデミーの建物は、via S. Martini という場所で、アカデミーのオーディションもここで行われました。
スカラ座アカデミーオーケストラはあくまでアカデミーであり、スカラ座のオーケストラとは別物です。
なのでアカデミー生からスカラ座のオケの団員にするという訳でもなく、スカラ座で欠員が出ればオーディションを行い公募で団員を決めます。
エキストラももれなくアカデミー生から呼ぶのではなく、オーディションの結果等で作られたエキストラのリストがあらかじめ存在しそこからエキストラを呼んでいます。
アカデミーにいるとスカラ座を出入りし現場の人と交流があるので情報を知る意味ではとてもいい環境ではあります。
アカデミー生のオーディション
ここでは私がオーケストラのアカデミー生として受験した時の様子を書いていきます。
オーケストラのオーディションは毎年奇数年の秋頃行われ、翌年明けから二年間アカデミー生として在籍出来ます。
オーディションの課題は割とどこのオケでも出すような課題です。
ヴァイオリンの場合だとモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3~5番のうちの任意の一楽章、無伴奏の自由曲、オーケストラスタディでした。
ヴァイオリンは二日にわかれオーディションがあり、私が受けた時は演奏の後、簡単な面接がありました。
オケの経験があるか、どうしてアカデミーを受けたいのか、音楽院をいつ卒業予定か、イタリア語・英語が話せるか等のよくある質問でした。
元々音楽院ではスカラ座のコンサートマスターの一人がオーケストラスタディのレッスンを行っていて、私はそれを受けていたのでその方経由で情報を聞いていました。
アカデミーから公式な連絡が来る前にオーディションが終わった日にすぐ審査をしていたスカラ座のコンマスであり私の師匠から首席で合格したよ、とメッセージがあったので先に言っちゃっていいの?(笑)と思いながらも合格に安心したのを覚えています。
アンサンブル・ベルナスコーニ
スカラ座のオーケストラアカデミーではオケ以外に現代音楽を中心とした室内楽のグループの公演を行っています。
ジョルジオ・ベルナスコーニという指揮者の名前から出来たアンサンブルのグループで、毎公演曲の編成が違うためメンバーは入れ替わりますがコンセプトは基本的に現代音楽を基盤とする室内楽のグループです。
このグループは小編成なのでオーケストラアカデミー生の中で人数の多い弦楽器の場合、首席のメンバーがこのグループに参加することが多いです。
公演によってはアカデミー生以外にソリストとして共演してくれるプロの方が来てくださったりいい刺激を受けます。
私自身現代音楽や室内楽も好きだったのでこのグループで演奏できることは楽しかったです。
最後に
スカラ座アカデミーは規模が本当に大きく、沢山の経験を若いアカデミー生にさせてくれます。
それこそ日本では出来ない体験も数多くありました。
私の経験談を少しでも何かの参考に役に立てたらとうれしいです。
他にもアカデミーでの事は別の記事で書いていけたらと思います。
その他質問なども受け付けています。もしわからない事や聞きたいこと等ありましたらお気軽に無料体験レッスンでご相談ください。