ヴァイオリンと親子関係
小さい子のお稽古事には音楽に限らず何かしら親のバックアップが必要です。
そして、大抵の場合親がその習い事を理解し積極的に関わってくる子の方が上達が早い傾向にあります。
小さな子供一人で練習出来るのか
ヴァイオリンや音楽を好きになったから始めたというお子さんもいれば、親に勧められて始めたお子さんもいます。
動機は様々ですが、例えば、私が以前教えていた子で、好きな特撮番組の主人公がヴァイオリン職人で、それに憧れてヴァイオリンを始めたという子がいました。
私はそれを聞いて面白いと思いました。
同時に、アニメや漫画、ゲーム、ドラマ等、そういった所に関心を持つきっかけがあると思うとむやみに禁止はしない方が良いのかなと思います。
ただ、どんなにヴァイオリンに憧れたり音楽が好きでヴァイオリンを始めても毎日先生にレッスンで言われたことを自分から復習していけるかというと非常に難しい事だと思います。
音楽に詳しくないから…と思って自分の子供に何も言わないという親御さんもいらっしゃいますが、詳しい詳しくないは重要ではありません。
もし何も言わなくても、それでお子さん一人で出来るなら何も言う必要はないと思います。
しかし一人で頑張れる子は本当にごく一部の子だけです。
詳しくなかったとしても子供のレッスンを聞いて何を言われたかメモし、それを毎日の練習で言ってあげる、問題があれば質問する等、出来る事は十分にあります。
そして上達の速い子の親御さんはそのように子供の為に行動し、勉強熱心な方が多いです。
もし子供のレッスンに付き添ってあげられないならレッスンを録音する等対策も取る事は可能です。
子供が練習を嫌がる
とはいえ、熱心になるあまり厳しくしすぎてヴァイオリンを嫌になってしまったという話もよくあります。
私自身藝大を卒業するまで練習は嫌いでした。
高校卒業まで練習には母がいつも付き添って、厳しく言われ続けていたこともあって、母親に言われるままに練習していればとにかく何とかなるだろうと非常に甘えた考えがありました。
なので東京で一人暮らしとなり、一人で練習するようになると母親に何も言われないので練習をしなくなりました。
勿論、母が練習で厳しく口出ししていなければ私はコンクールで入賞したり藝大に入る事はなかったと思うのでずっと感謝はしていますが、それと同時に自主性は成人を超すまでなかったことを思うと、その年になら私自身の責任ではありますが少し複雑ではあります。
上手く本人のやる気や自主性を尊重しつつ、間違った方向に練習してしまっているところを親が軌道修正してあげられると良いのかなと思います。
親も勉強する
親が音楽やヴァイオリンの知識がある事はさほど重要でないと書きました。
しかし、お子さんの上達の為に親も勉強する姿勢は大切です。
これまで習ってきた先生の門下の子で小学生の頃からコンクールで入賞するような子達はお母さん(またはお父さん)が非常に勉強熱心でした。
どこの門下に行ってもそれは変わりませんでした。
レッスンを聞いてメモを取る以外にヴァイオリンに関する本やビデオを見たり演奏会に行ったりCDを聴いて色んな曲を聴いて知る等、とにかく熱心に知識を得るご両親ばかりでした。
時には自分の子より年上の同じ門下で優秀な生徒さんに話しかけたり、練習のヒントを様々な所から得ようとしていました。
環境と関心
例えば、本がたくさんある家で子供が育つとよく本を読む子になる、成績が良い等と言われます。
ヴァイオリンも同じだと思います。
先程音楽家でなくても子供の上達にはさほど重要ではないと言いましたが、親が音楽家だと家に楽器や楽譜があって、音楽に触れる機会は自然と多くなる意味では有利なのかもしれません。
音楽家の子供だから才能があるのではなく、音楽を勉強しやすい環境にあった為に音楽と共に成長出来たからです。
なので、音楽家の家庭というより、音楽に常に触れられる環境が重要なのでしょう。
私の家庭は誰も音楽家ではないのですが、母がヴァイオリンやオーケストラが好きで沢山クラシック音楽のCDを持っていました。
私が小さい頃、母が持っていたサン=サーンスの動物の謝肉祭のCDに合わせてぬいぐるみを躍らせる遊びがとても好きでした。
他にも家にあるクラシック音楽のCDを流してそれにお話をつけてお人形ごっこをしていたり、そういう意味では音楽が近かったと思います。
今になって考えるとこの環境は私の音楽に対する関心を高めてくれていたのかもしれません。
演奏会に行く
CDを聴いたり音楽の動画を見る事は勿論手軽で良いのですが、出来たら演奏会にも足を運べると理想的です。
実際に見て聴くのとCDや動画では迫力も違いますし、演奏会の雰囲気や演奏家の息遣い等、メディアの媒体を通してだとわかりにくい事を肌で感じる事が出来ます。
先生にもよく「演奏会に行きなさい。今の音高、音大生は演奏会に行かない。他人の演奏に興味がない人が人に興味を持ってもらえるような演奏を出来る訳がない」と言われていました。
イタリアが演奏会に行きやすい環境なのかわかりませんが、トリノやミラノの音楽院の子達は演奏会によく行き、私も演奏会に行くとほぼ必ず音楽院の誰かを見かけます。
日本にいた時はこれ程学校の友達に演奏会で出会う事がなかったので演奏会に行く頻度は日本の学生全体で低いのかなと思ってしまいます。
私はコンクールや何か大切な舞台がある直前に演奏会(それも世界的にもレベルの高い演奏家の)に行っていました。
自分が弾く曲とは違うプログラムですし、関係ない事の様に感じますが、上手い人の演奏を聴くとそれが脳の片隅に残っていて、自分が演奏するときのその人の様に弾きたいと思いいい影響を受けることがあります。
全く証明出来る根拠があるわけではないのですが、少なからず演奏会に行く事で自分の演奏にも何かしら影響が出てくると思っているので特に上手な人の演奏は聴くべきだと思います。
お子さん一人演奏会に行く事は難しいので親御さんの付き添いが必要にはなりますが、演奏会に行く機会を小さい頃から与えてあげる事は音楽の教育の上では大切な気がします。
最近では子供向けのコンサートが行われているので、まずそういった子供でも退屈しない演奏会から行ってみるのはいかがでしょうか。
最後に
かの有名なモーツァルトやベートーヴェン、バッハ達は常に音楽に触れられる環境で育ったと言われています。
子供に限らず人は周りに非常に影響されます。
もし音楽が好きな子なら音楽に触れられる機会を沢山与えればさらに成長していく事と思います。